料理研究家 濱田美里

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2015年3月『濱田美里の郷土料理③岩手篇』

2015.04.07 │ いままでのメニュー

『濱田美里の郷土料理③〜岩手篇〜』

・クルミの巻き寿司
・豆腐田楽(ネギ味噌)
・柳ばっと
・こんにゃくのくるみ和え
・あさつきの酢味噌和え
・デザート へっちょこ団子

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3月のお料理の会は、岩手県の郷土料理。
私がこれまでに、花巻、盛岡、二戸を取材して
おばあちゃんたちから教わった料理を皆様にご紹介しました。

「このあたりじゃ、昔はおいしいもののことを、“くるみみでえに(みたいに)うめえなー。”って言ったんだよ。」
というお話をうかがったことがありますが、
岩手全域で、くるみはよく食べられるそうです。
特に山間地では、魚など動物性食品のうまみや栄養に代わるものとして、
大切に食べられてきたのだと思います。
そのことが本当によく表れているお料理が、「クルミの巻き寿司」。
海に近い地域だと、きっと穴子とか、エビとかが入ってくるだろう部分に
クルミが入るんですよね。
はじめて出会った時、私はそのモダンな味や組み合わせにビックリして、
(だってカリフォルニア辺りにありそうじゃありません?)
なんてすてきなお寿司だろう、って思いました。
こうして山の恵みを使ってハレの日を祝ってきたんだなあと、
土地から生まれた知恵やひとびとの思いに、心をうたれました。

その時、同じようにクルミを使ったお料理として、こんにゃくのクルミ和えも教わりました。
こんにゃくもクルミも、皆さんご存知の食材ですが、あまり組み合わせることは無いのではないでしょうか。
よく炒ってぷりっとしたこんにゃくと人参に、甘いクルミのたれがからまって、とてもやさしい一皿だと思います。

豆腐田楽に塗ったねぎみそは、これまたビックリなことに、
包丁で切らずに、ポキポキ折って、すり鉢ですりつぶします。
「どうしてですか?」
と尋ねたら、
「昔からそうだったから。」
!!!
郷土料理ってそうなんですよね。
でも明らかに、包丁で切ったのとも、ミキサーで撹拌したのとも、違う味になる。
ねっとりとしたネギの粘りがたくさん出て、とろとろになる。
私はからだへのはたらきかけも違うんじゃないかとひそかに思っています。

それから、他県の人は見たことも聞いたことも無いであろう「柳ばっと」というお料理。
「はっと」というのは、大ざっぱに言うと、粉をねってのばした麺ものを指すようですが、岩手の中でも、地域によって材料や形が変わってくるそうです。
私が二戸で教わった柳ばっとは、そば粉を練って、柳の形に成形したものを汁の中に入れて食べるお料理です。

そば粉を練ってこんな風に形作り、温かい汁の中に直接入れます↓

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みんなでわいわいと柳の形を作っていると、自然と笑い声が生まれて、
きっとイタリアの田舎でもこんな風に手打ちパスタを作っているんじゃないかな、
と想像してしまいます。

岩手県の北部地方は、気温が低く山間地が多いので米がとれにくく、
昔はそばやひえ、あわ、といった雑穀でいのちをつないでこられたのでしょう。
そこにはきっとたくさんの工夫があったに違いない、
と思って取材に出かけたのでした。
この「柳ばっと」というお料理も、わざわざ手を使って柳型にするというところに、
知恵や遊び心を感じます。
そして、もう一つ教わった「へっちょこだんご」にもたかきび粉を使っておられました。
たかきびは、別名コーリャン。
米も小麦もとれない地域でもとれるといわれる穀物です。
このたかきびの粉で作ったお団子のおいしいこと!
風味豊かで、プルリンと柔らかく、私は米粉で作るよりずっと好きだと思いました。
どうして「へっちょこだんご」と言う名前がついたか、については、
私が岩手で撮影してきたおばあちゃんのビデオを見ていただきました。

あ、そうそう、岩手のへっちょこだんごとは全く関係ないのですが、
お汁粉を食べていて、塩レモンの皮を入れたらおいしいのでは、
と思いついたので、皆さんにもおすすめしました。
すっと大人びた味の、春らしいへっちょこ団子になったかなと思っています。

(投稿:美里)

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