料理研究家 濱田美里

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クネッケブロート

2018.03.01 │ ブログ

2月の六甲教室のオードブルに、
クネッケブロートというスウェーデンのパンを使いました。
パンといっても写真のような感じで、クラッカーのようなパリッとした食感です。

伝統的に、この真ん中の穴に棒を刺して、乾燥させるのだそう。
だからカリッカリで、かなり日持ちがします。
どこのスーパーでもたくさんのメーカーのものが売られているのですが、
私はスウェーデン語が読めないので、悩んだあげく、以下の2つをジャケ買いしました!

デザインが素敵ですよねー。
家に帰って、裏の材料表のスウェーデン語を調べてみたところ、
どうやら上の方は大麦の全粒粉、下の方はライ麦の全粒粉でできているよう。
食べてみた感じは、大麦のクネッケの方が酸味が少し強いです。

お教室ではライ麦の方を使って、あの鉄の皿に円盤状に盛り付けよう♪
と帰りの飛行機の中で決めていたので、
なんとなく北欧の春をイメージした一皿に仕上げましたが、
大麦のクネッケも食べれば食べるほど滋味があって美味しい。
こういう酸味のあるパンって大好きなんです。

決して肥沃とは言えない土地で、何とかとれる穀物を使って作られた主食というと、
日本で言えば十割そばでしょうか。
そう考えるとやはり日本の食文化の根底には豊かな「水」があり、
ヨーロッパの食文化のベースには「窯で焼く」ということがあるんだなあと思いますね。

ドイツのプンパニッケルもそうですが、ライ麦のようなほとんどグルテンを形成しない穀物を使って、
(しかも粉のうちの全量を、全粒粉で!)
日持ちのする風味あふれるパンに仕上げたその知恵に、私は心から敬服します。
そして食べると体の調子が明らかに良くなるのを実感します。
(ふんだんに含まれる食物繊維と酵母のおかげでしょう)

それは、日本の東北地方を取材して、おばあちゃん達から、
ヒエやアワ、高粱などを実にゆたかに食べる知恵を教わった時の感動に似ています。

温かい場所や豊穣から生まれた文化には、
陽気でテンションの上がるたのしみがあり、それも大好きですが、
困難から生み出された豊かな知恵を目の当たりにした時(そして食した時)には、
大きく胸をつかまれて、言葉を失ってしまう。
そこには、これからの時代を心身共に元気に生きていくためのヒントが
たくさん詰まっているようにも感じています。

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