料理研究家 濱田美里

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デスクティ

2018.03.14 │ ブログ

うちのオフィスでは、毎朝出勤後にマキさんが1日分のお茶をポットに作ってくれます。
(お昼ごはんとか喉が渇いた時に飲む用。仕事終わりのお茶の時間のは別。)

今日は、私は一人書斎にこもって、講演の内容をまとめたりアイディアを出したりと、
うんうんデスクワークをしなくてはならない日なので、朝から相当頭が重く、
逃げ腰で、どうでもいい気晴らしばかりして(デスクの掃除とか、パソコン磨きとか)
さっきキッチンへ行って、マグカップにお茶を注いできました。

一口飲んで、「あれ?久しぶりに赤じそ入れた?」
「はい、今日花粉がすごいですから。」
(ちなみに私も彼女も花粉症の症状は全く無いのですが、飛んでいるのはわかるので、
いつ発症してもおかしくない状態。念のためマスクして出歩いています。)

わあ、こういうことができるようになったんだー。

彼女と働くようになって丸10年。
私は一度も面と向かって中医薬の講義をしたこともなければ、
料理さえも手取り足取り教えたことは何1つありません。

私が20代の初め頃に、どうにもならない体の不調を直してくださった漢方薬の先生がいます。
その先生の薬は劇的に効いたのですが、その薬の作り方はちょっと魔法使いのようでした。
2週間に一度通って薬を作っていただくのですが、私が行くといつもパッと顔色を見ただけで、
状態をお当てになるのです。そして、奥へ行って、葉っぱとか根っことかを組み合わせてものすごくまずくて強烈な薬を何袋も作ってくださるのですが、その処方はまるでライブ感溢れる料理でした。

「相手の心身の状態、その時の湿度、温度、季節、空気の感じ全部で、臨機応変に変えていかないと、いいものはできんだろ。
漢方薬いうのは、変幻自在だ。
料理だってそうだろ。そういうのを感じることができんなら、あんたも料理なんてやめた方がいい。」

1年半その先生のところに通い続けて体調を改善した経験や、あの時の先生のお言葉は、
その後の私にとても影響しているなあ、と今になって思います。
もうこの世にいらっしゃらないから、2度とお会いすることはできないけれど、
こうして一人の方のお仕事ぶりや生き方が誰かに伝わり、それがまた誰かに伝わっていく。
一杯のお茶で急にそんなことを思い出して、しんみりしてしまいましたー。

さあさ、仕事に戻りましょ。

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