料理研究家 濱田美里

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ハチク

2018.05.30 │ ブログ

商店街を歩いていると、もう孟宗竹(モウソウチク)のたけのこは終わって、
「ハチク」と書かれた細いタケノコがたくさん並んでいます。
「破竹の勢い」のハチクではなくて、「淡竹」の方。
甘くて、柔らかいタケノコで、私大好きです。
東京にいた時よりも、神戸の方がよく見る気がするな。

この時期になると、よく「タケノコって冷凍できるんですか?」という質問を受けるのですが、
孟宗竹はやっぱり冷凍すると味が落ちます。
スカスカしてしまうから、小さく切って味をつけて冷凍するくらいかな。
でも、ハチクはなぜか冷凍するとおいしくなるんですよ。
茹でて適当な大きさに切って冷凍しておくと、炒め物なんかにも使えてすごく便利です。

5月の初めにお友達が、竹林のお庭を持つお母様のお宅に、
「タケノコ堀りをしよう!」と招いてくれました。
車を40分くらい走らせて、行った先はもう別世界。
広ーいお庭には、しっかりと手をかけられた半端のない数の木々が息づき、
鳥の鳴き声が聞こえて、木漏れ日がとてもきれい。
このお庭に毎日毎日息を吹き込むことの大変さを想像すると、
緑の指を持たない私(ハーブ1鉢枯らしてしまう!)は、
ただただ感心しボーッとなってしまいました。

タケノコ堀りの後に、テラスでお茶をいただいたのですが、
その時にお母様が、ささっととれたてのハチクで煮物を作ってくださったんです。
(もちろん木の芽もお庭から!)

そのタケノコ、「包丁できっちり」はなくて、わざとザクッザクッと割ってあって、
それがとてもアーティスティックでした。
いただきながら、料理っていいなあ、と改めて思ったのは、
その1皿が、大胆で繊細な、そのお母様そのものだったから。

その後に、お母様が画家と知り、お描きになる絵も見せていただいて、
ものすごく納得しました。
生き方にも、手から生まれ出るものにも、味にも、一貫性があって。
ターシャ・テューダーとか、ジョージア・オキーフがタケノコ煮たら、
と思わず想像してしまいました。

多分この先どんなにAIが発達したとしても、こういう「その人の味」っていうのは、
人間ならではなんじゃないかなーと思いますね。
ああ、私も、日々の生活をもっとたのしんで、慈しみたいなあ(ちゃんと水やりしよう!←レベルが低い)、
と改めて思いました。

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