読書記録
2021.06.28 │ ブログ
『シェフたちのコロナ禍〜道なき道をゆく三十四人の記録』
(井川直子/文藝春秋)
1週間かけて読了。
3時間くらいあれば読める文章量なのに、
胸が詰まりすぎて、少し読んでは休み、少し読んでは考え、
何日かおきにしか、ページを開くことができなかった。
グランメゾン、家族経営のイタリアン、深夜型の居酒屋、横丁の老舗、
スタンディングバー、お寿司やさんにお蕎麦屋さん、と、
規模も場所も形態も営業年数も全く違う34名のシェフたち(お店のセレクトがまずすごい)の、力強い言葉の記録。
2020年の4〜5月、緊急事態宣言真っ只中と、2020年10月の追加取材。
あの状況下で、経営者として、料理を作る人として、食と場所と時間と喜びを提供するプロとして、
どう考え、どう社会を読み、どうもがき、どう苦しみ、どう愉しみ、どう選び、どう覚悟し、どう行動したか、
そしてこれからをどう考えているか。
34人全員違う。正解はない。
あえてその違いを(違いの背景を知ることで、知らないことによる分断を防ぐことができるのではないかと)、
そして全ての方が守ろうとされた仕事への誇りや熱を、
井川さんは敬意を持って書いておられる。
(何年か前に出版された『シェフを「つづける」ということ』も印象的な本でした。)
もちろんコロナ禍というのは、極めて特殊な状況ではあるけれど、
自営業者にとって、答えも正解もない中で仕事の舵を切って行かなくてはならないのは今に限らないこと。